第10回 温暖化の先にあるのは

なもないミニコミ誌2008年1月号の掲載記事です。
 
 前回は地球温暖化によって地球の平均気温が2℃上昇したらどうなるかということを話しました。地球温暖化の影響はもう避けられないところまで来ています。これからの未来はどれだけその影響を緩和できるかにかかっています。

 ところで、年末にテレビで環境問題を斬るといったような内容が放映され、間違った情報ばかりを鵜呑みにして現在やっていることが無駄だといわんばかりの批判をしていました。見たところ、確かに正しいことは言っていますが、それは一部分の見方しかしておらず、見た人がこれを鵜呑みにしていたらせっかく芽生えてきた環境意識が低下してしまうであろう言い方でした。
 
 例えば、「CO2が増えると温暖化が進むが、その分植物はCO2をたくさん吸うので食糧増産になる」これはCO2による「施肥効果」といい、CO2濃度が高くなると確かに農作物の生長はよくなります。が、農業はそんなに単純ではないはずです。小麦は冬に気温が下がらないと夏に穂をつけません。冬に温暖だとどうなるでしょうか。また、生長がよくなっても、異常気象でオーストラリアであったような大干ばつや超大型の台風やハリケーンが多数上陸したらその被害は尋常ではないはずです。

 また、「温暖化によって海水面が上がることは科学的に実証できていない」確かにそうですが、科学的に100%実証するということは科学の世界ではかなり難しいといわれています。しかし、もし実証できたとしても、それから手を打ったのでは手遅れになってしまいます。それに温暖化が人間の影響であるということはIPCCの報告書からも分かるとおり、多くの科学者が認めており、異議を唱えられる人はいません。

 また、「北極海の氷が溶けても海水面は上昇しない」これも確かにその通りです。海水面の上昇は熱による海水の膨張や山岳氷河の融解によって起きています。しかし、北極海の氷が溶けても何も変わらないというわけにはいきません。北極海の氷に依存して生活しているホッキョクグマやアザラシなどはどうなるのでしょうか。しかし氷が溶けて海水面が露出すると、さらに温暖化が加速される恐れがあります。

 北極海の氷が溶けると、さらに悪影響を及ぼします。それは海洋大循環の停止です。海流は世界中を巡り、表層から深層まで非常にゆったりと流れています。ヨーロッパ付近の海では南から来た暖かい海流が深層に沈み込んでいっています。これは南からの海流は塩分濃度が高いということと、ヨーロッパ付近で冷やされることによって起きます。しかし、北極海の氷が溶けたり、グリーンランドの氷が溶けて淡水が大量に流れ込んだりすると塩分濃度が薄くなり、表層の海水が沈みにくくなります。こうなると、海流の流れる力が弱まり、暖かい海流に気候を支えられていたヨーロッパには大寒波が押し寄せ、アフリカなどでは乾燥化・砂漠化が一層進みます。そしてその影響は世界中に及びます。地球の気候にとって重要な役割をしている海洋大循環がもし停止してしまえば、地球にどんな気候変動が訪れるのか予測ができません。完全に停止してしまう可能性は低いだろうといわれていますが、それも予測は難しく、現実になってしまうかもしれません。

 温暖化はその一面しか見なければたいしたことがないように思えてしまいますが、自然界は人間の想像以上に複雑で完全に理解することはできないものだと思います。自然環境を変えることはその変化を自然が受け入れてくれるかにかかっています。もし、CO2の増加を自然が受け入れてくれるならば、人類は生きながらえることができるでしょう。しかし、受け入れられなければ、その先にあるのは破滅でしかないと思います。それを防ぐすべは人間にしかありません。これから何をして、どう生きるべきか、1人1人が考えていかなければなりません。

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