『koko』から考えるカーボンオフセット理論

 私はこれでも


 自他共に認める坂本龍一氏の大ファンである。
 環境問題に興味を持ったのも坂本さんの影響だし、坂本さんの動向は常にチェックさせてもらっている。
 だからと言って、坂本さんのすべてのCDを購入しているわけではないし、手放しに坂本さんを奉信しているわけではない。自分が「つまらないな」と思えば、たとえ坂本さんの楽曲だろうと手は出さないし、間違っていることを言っていれば素直に間違っているな、と思う。
 無条件に坂本さんのことを奉信するのは「コレクター」とか「信者」と呼ばれる人の仕事であって、批評するときにはちゃんと批評してこそ、真のファンと言うものだ、と私は思う。

 で、『koko』の話なのである。

 『koko』は「カーボンオフセットCD」である、という触れ込みを見て、私は以前にもカーボンオフセットや排出権市場について批判をしたことがあったので、CDという大量生産大量消費の媒体にカーボンオフセットの理論を持ち込むことについて、『koko』を通じて思いっきり批判してやろう、と思い、いろいろと調べてみたのだが、意外と問題は複雑だ、ということが分かってきた。

 なので批判というよりは、『koko』を通じて、カーボンオフセットの基本的な考え方を、まず整理していこうと思う。

 
 まず「カーボンオフセット」とは、ある行為に準じて発生するCO2を、環境事業に寄付をしたり、実際に植林したりして、別の所でのCO2削減に貢献することにより、差し引きゼロにしよう、という考え方のことである。
 で、まず第1に「カーボンオフセット○○」と名づけられたものは、
 「どこで発生したCO2を何によって相殺するのか」という対象と用途を明確化する必要がある(例えばカーボンオフセット年賀は、この“対象と用途”が定まっていないままにカーボンオフセットを謳った、ということで私は過去の記事で疑問を呈した)。
 
 『koko』の場合、まずどこから発生したCO2を対象とするのか、というと、「CDを作る際に発生したCO2」とのこと。
 そしてどうやって相殺するのか、については、自身の活動である「more trees」での植林活動で植えた木によって相殺してもらう算段らしい。(共に「commons」HPより)
 「commons」HPによると、「CD1枚を作るのに排出されるCO2は3kg」らしい。その3kgは、CDの生産、流通、販売、レコーディングすべての過程で排出したCO2量の総括で、実際CDを作るのに必要なCO2量はそんな程度で済むのだろうか、という疑問はあるのだが、まずはこの数字を信じることにする。
 そして、どれだけの木を植えれば、どれだけのCO2を削減できるのか、ということについて、「more trees」では、「67k㎡の森林で50kg削減可能」としている。単純に1k㎡あたり1.34kgの計算だ。
 『イーココロ!クリック募金』のサイトによると、67k㎡の森林を整備するのに必要な資金は1000円。1k㎡あたり約15円の計算となり、『koko』でのCO2相殺目標に必要な額はおよそ45円、という計算となる。

 そして第2の問題は、こういった商品に付随した寄付で、一体いくらぐらいまでが寄付可能なのか、ということだ。
 私の手元にあるもので参考になるのが、宮崎あおいちゃんの『たりないピース』内にある、書籍作成にかかる費用と寄付の内訳で、『たりないピース』内では、宮崎兄妹のギャラも寄付金に含まれるので、そこは除外して、純粋な経費と寄付金の内訳だけで見ると、だいたい75円くらいまで、寄付金として回すことが可能なようだ。
 『たりないピース』は税込1575円。そのうち75円が寄付可能。
 『koko』は1290円、純粋に75÷1575のパーセンテージを1290に当てはめると、だいたい65円がカーボンオフセットとして利用可能だろう、という推測が立つ。
 『koko』でのCO2相殺目標に必要な額はおよそ45円だと考えると、額面上は十分、CO2を相殺できそうだ、という結論が出る。

 だが第3の問題として、「きちんと完全相殺可能な額までオフセット金は回収できるのか」ということがある。
 『koko』の場合、ちゃんと生産数をすべて捌ききることができるのか、ということだが、これは坂本さんが悪いのではなく、現実的に考えて条件的に不可能だ、と断言してしまっていいだろう。
 つまりここで、大量生産大量消費の商品に、カーボンオフセット機能を付けることの無理が出てくるのだ。


 疲れた。まとめよう。
 カーボンオフセットを行う際に必要な条件は、
●「どこで発生したCO2を何によって相殺するのか」を明確にし、
●「具体的にいくらが相殺に利用でき、その額で理論上相殺は可能なのか」を分析し、
●「現実問題として、その“理論上”の額を達成することは可能なのか」を示すことである。

 逆に言うと、この3点を的確に示せない商品や事業は、そもそもカーボンオフセットには向いていない、ということになり、そういう意味で「CD」という媒体はカーボンオフセットには向いていない、という結論から、坂本さんを批評することは可能だと思う。


 カーボンオフセットは、良いとか悪いとか言うこと以上に、非常に厳密な考証を必要とする、という意味で、かなりややこしいし、その分数字のトリックを利用することで、いくらでも騙せるし騙される。
 やはりカーボンオフセットは、いろいろな意味でかなり“危険”なシステムなのだ。


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