似て非なる共感

 「あなたに私の気持ちなんて分かるわけないじゃない!」

 という常套句がある。よくある話だ。

 この常套句に対する模範解答は、2種類存在する。

 一つは「分かる」ということを前提にしたものだ。
 「お前と何年付き合ってると思ってるんだ」とか「心理学の領域から言うと今の君の気持ちはね・・・」とか、とにかく既知の経験や知識を元に、相手の気持ちを当てはめれば、「共感できない思いなんて存在しない」とする考え方だ。

 もう一つは「分からないよ」というもので、しかしその下の句として、「分からないからこそ、必死になって近づこうとしてるんだ!」という言葉が後に続く。

 要するに、「あなたに私の気持ちなんて分かるわけないじゃない!」という言葉に関しては、
 「分かるよ!私にも同じような経験があるから、今のあなたの気持ちは痛いほど分かる・・・」と言うか、
 「分からないよ!私なんて頭も悪いし気遣いもできないし、他人の気持ちなんて全然分からない。でも、あなたが苦しんでいる姿を放っておけないの、分からないからこそ、あなたの気持ちに少しでも近づきたいの!」
 と言うのが正解だ、ということになる。

 つまり分かっても正解、分からなくても正解。

 なんでそんなことが起きるのかと言うと、
「あなたに私の気持ちなんて分かるわけないじゃない!」
 と言っている側も、「本当に分かるわけがない」と思っているのか、「本当は分かってほしい」と思っているのか、そのどちらでもないのか、あるいはその両方なのか、判断がついていないからだ。


 まあ要するに、「共感」ということを「相手の気持ちが分かる・分からない」という物差しで計ろうと思うと、どこかで失敗することがある、ということだ。

 「分かる・分からない」ではなく、「共にある」から「共感」と言うわけで、そこを勘違すると、あまり良い結果にはならない。
 人間の感情は、単純ではないのだ。

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