2008年07月20日
誰も知らない世界
接客業をしている関係上、様々な人に出会うのだが、本当に酷い人がいる。 生活保護をでっち上げて豪遊している人や、1週間風呂に入っていなくて足が化膿してしまっている人、重度の痴呆で自分がなぜここにいるのか分からなくなる人や、うつむく自分の子供の顔を平手で殴りながら無理やり商品を選ばせる親、雇い主に連れてこられた日雇い労働者や、経済難で5000円が払えない老人、万引き犯やクレーマー、自分の言い分しか受け付けない人や、ヒステリーで商品が顔に触れただけで叫び声を上げる人、・・・・ そういう人たちが現実にいることを知っていて、そういう無名の最底辺にいる人たちが、この世界を構成しているのだ、と分かっているからこそ、私が世界を語るときには、必ずこういう人たちの目線から物を語ることになる。 だがおそらく、公務員や営業マン、メーカー勤務の人やIT企業の人や、会社の重役の人たちにとっては、ワーキングプアやモンスターや、ホームレスや障害者の存在など、テレビや本の中の世界の話で、彼らが世界を語る時、そういう人たちの存在は、物の換算にすら入っていないのだろう。 だから、私の語る世界と、他の人が語る世界は、どこかでズレがあり、どこかに違和が生じている。 昔健康器具の営業をしていた、という人がいて、その人が言うには、末期の高齢者の有様というのは、この世の地獄を見るようなものらしい。 足腰が弱まるといけないから、との言い訳で家族から家を追い出され、1日10時間ひたすら駐車場の車1台分のスペースを歩き続ける人、汚物を手のひらに抱え、微笑みながら差し出す人、廊下に排尿して嗚咽を漏らしながらその場にへたり込む人、何を食べさせてもうまいもまずいも辛いも甘いも感じられなくなった人、パーキンソン病で体が丸くなり、布切れと区別がつかないほどに小さくなってしまった人、家族と同じ食卓を囲む体力もなくなってしまったので、一人床に座らされ、ペットのように食事を取る人・・・ その人は神も宗教も、平和も救いも信じないと言う。 「神とか救いとか言うならさ、まずそいつが、俺の見た救われない人たちを100人救ってみろよ、っていうんだよ」 たぶん私には私にしか分からない世界があって、彼には彼にしか分からない世界があって、裕福に何不自由なく生きてきた人は、その両方とも、生涯知ることなく人生を終えていく。 そう考えていくと、この世のすべての人類誰からも見向きもされない、「誰も知らない世界」というものも、この世には存在するのではないだろうか。 私たちが語る世界というものは、あまりにも小さく、そしてあまりにも、現実に届いていない。
- posted by よっひ~ |
- 21:57 |
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