鎮魂歌〔レクイエム〕

 『悲しみに寄り添うカウンセリング』という本を読んでいる。これは人間の悲しみや苦悩を「慟哭」というキーワードで捉え、カウンセラーの目から見た、現代を生きる人々の姿を炙り出した本だ。
 「慟哭」、深い悲しみや苦しみは、時間や空間を越え、人々の「今」に暗い影を落とす。言葉にならない叫びは、人の精神ひいては体をも縛りつけ、それは10年20年、いや一生かかろうとも、その人の心から離れることはない。

 私は以前他のブログで、そのような、心に深い悲しみや苦しみを持った人の存在と、環境保護活動を結びつけて考えたことがある。かなり長いが、ここで全文引用してみる。

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 『百年の愚行』という本がある。この100年、我々人類はこの星に何をし、何を残してきたのか。環境破壊、戦争、貧困、・・・科学と経済の世紀がこの星にもたらした傷跡の数々を、数多の写真家の記録によって構成した写真集である。
 
 それとは別に、私事ではあるが、友人の一人がある宗教の信者であることが分かったので、今その宗教について勉強をしている。

 勉強をしていると、環境保護活動と、宗教の信仰には共通点があることが分かる。自らの行いを不確定な未来への投資としていること、深く入り込めば入り込むほど視野が狭くなる恐れがあること、同じ考えを持つ者同士が結託する傾向を持つこと、いろいろあるが・・・

 何より大きいのは、個人的な贖罪意識がその出発点となっていることだ、と思う。
 環境保護も、宗教の信仰も、まず何より、自分が罪を犯している、誤った道を歩んでいる、そういった罪意識が原点にあり、そこから次世代のために行動を起こすことでその罪を償おうとするのか、あるいは神に対する信仰によってその罪を償おうとするのか、その方向性の違いによって道が分かれるだけで、根源は同じものなのではないか、と思うのだ。

 だからこそ、絶望や苦悩を感じたり、孤独や憂鬱に悩んだり、自らの罪意識に喘いだりしたことのない人は、必然的に環境保護や宗教に自らのアイデンティティを求めるようなことはないだろうし、そういう人たちはむしろ幸せな人たちなのではないだろうか、とも思う。

 だからこそ私も、環境保護や宗教の活動そのものよりも、最近は、なぜ環境保護や宗教に興味が向いたのか、その心境の動向に興味がある。

 結局は、人の心の問題なのだ。そう思う。

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 このような考え方を持って環境保護活動に臨んでいる人が、多数派なのか少数派なのか、私には分からない。
 ただ、自らの心の内に潜む悲しみや苦しみに対して、地球という「母」へ懺悔し祈りを捧げることで、「慟哭」を鎮めようしている人は確実にいて、そのような贖罪意識を持つ人が、環境保護活動を通じて繋がることで、「母」へ、そして自らへの大きな祈りになると、私は信じている。
 
 『悲しみに~』では、鎮魂歌(レクイエム)を心の内奥に響かせ、悲しみや怒りを鎮め安息を得る必要性を説いている。
 きっと、地球にも、人々にも、私たちにも、今、レクイエムが必要なのだろう。

 レクイエムを、歌える人になりたい。

間に合う、間に合わない

 手元に「豪快な号外」があるので、それを読んでいる。「笑い楽しみながら」という割には内容が全然笑えないが(中身が深刻なので)、まあそれはそれとして。

 環境問題を考える際の一つの共通理解として、「このままでは間に合わない、でも今からならまだ間に合う」というものがある。
 ふと、「間に合う」という状況はどういうもので、「間に合わない」とはどういうことなのだろう、と考えた。
 有名なアル・ゴア氏の「不都合な真実」を見ると、既に海面の上昇により避難を余儀なくされている地域や、地表を覆っていた氷が解けて家が倒壊している地域、砂漠化により消滅したオアシスなどが現実に存在しているようだ。
 つまり、既に「間に合っていない」場所もある、ということだ。

 もう間に合っていないところもあるのに、「今からならまだ間に合う」というコピーが通用する。これをどう捉えればいいのだろう。
 私たちが普段使っている「まだ間に合う」というのは、じつは無意識に、「先進国が環境破壊の被害を被らない状況」を指してはいないだろうか。身もふたもない言い方をすれば、「アフリカやアイスランドやバングラデシュが壊滅しても、アメリカや日本が無事であれば間に合った、と言える」というような意識が、無意識ではあれど働いているような気がする。
 豪快な号外でも、「10年後このままでは日本はこうなる」という事例を挙げていて、アフリカはもう既にこういう状態だからもう間に合っていないんだ、ということは書かれていない。
 間に合う、間に合わないとはどういうことなのか。その定義を捉えなおすことで、環境問題に対する深刻度は、少し変わってくるような気がする。