増殖する南北問題

 どうやら私はとんでもない勘違いをしていたようだ。

 以前の記事で、この国における毎年の過労死者の数は「300万人」と書いたが、実際は「300人」の間違いだったらしい。
 ただ、その数の多い少ないに関わらず、毎年過労死者は確実に出ているわけで、そういう現実がこの国に存在する、という事実そのものを、胸に留めておいていただけるとありがたい。

 で、その過労死者の正確な数が分かったのと同時に、もっとショッキングな統計を知った。
 ●http://www.jcp.or.jp/akahata/aik07/2007-07-23/2007072301_02_0.html

 「しんぶん赤旗」の記事なので、身が引ける人もあるかもしれないが、ぜひ目を通してほしい。
 これは、この国での、毎年の「餓死者」の統計である。
 餓死とは、読んで字の如し食料が枯渇し飢えが原因で死に至ることで、従来貧困や餓死は途上国の問題だと考えられてきた。
 しかしこの統計では、1995年を皮切りに、毎年100人近い人が、この国で餓死によってなくなっている実態が明らかにされている。

 この国での貧困の問題が「格差社会」と名付けられて久しいが、「貧困」と「格差社会」の決定的な違いは、「衣食住に不自由するかどうか」にあった。
 日本では、どんなに仕事を失って、貧乏になろうとも、衣食住には困ることはない、という暗黙の前提があったように思う。
 しかし、特に都市部におけるホームレスの数は年々増加の一歩を辿り、まず「住」の自由が失われている現実を、私たちは既に目の当たりにしている。
 そして今、この国では「食」の自由ですら、脅かされるようになってきている。

 世界の貧困の問題は、通称「南北問題」と呼ばれてきた。発展の途上にあり、食べる自由すら維持できない南の国を、裕福な北の国が援助する、そんな構図があった。
 だが、今現在、貧困の問題は「南北問題」という世界の問題だけでない。裕福だとされていた北の国の中にも、食や住を保障されない人々が現れ始め、いわば、北の国の内部にも「南北問題」が発生している、と言っていいだろう。

 忘れてはならないのは、世界における「南北問題」が、アメリカが「アメリカ式経済」を南の国に持ち込んだことによって引き起こされた「人災」であったのと同じように、北の国の内部における貧困の問題も、人為的に引き起こされた「人災」であるという事実だ。
 南北問題では、南の国から資源や人材を搾取することによって、北の国がその恩恵を得る、という世界レベルでの「格差」の流れがあった。
 しかし、経済的に成熟した現在にあっても、「もっと豊かにならなければならない」という北の国の欲望はとどまることを知らず、今度は自分たちの国の内部に「格差」を発生させることにより、貧しいものを恐怖でコントロールし、富める者がその恩恵を得る、という流れを生み出した。

 現在、この星では、2割の人間が世界の8割の富を独占しているのだと言う。これは、南北問題が生み出した一つの結果だ。
 だがこれからは、人為的に生み出された「北の国内部の南北問題」によって、資源を独占するものはさらに絞られ、それと対称に、搾取される貧しき者の数が爆発的に増加していくだろう。

 真実は一つだ。この国にも、住処を失うもの、餓死するものが現実にいて、既に貧困の問題は、ある特定の国の問題ではない。