理論の矛盾に騙されないために

 なるほどな、と思わず唸ってしまった。

 8月8日付、某新聞。1面の左下部分に、「農薬工業会」という団体の意見広告が掲載されていた。
 本文が長いので要約すると、地球温暖化の進行によって、今後作物に大きな被害がもたらされ、減収を余儀なくされる恐れがある。なのでこれからは、作物の品種改良と共に、農薬の役割が今まで以上に大切になるだろう、ということだった。

 稚拙な要約かもしれないが、この要約だけでも、「えっ?」と思っていただけると思う。
 要するにこの意見は、「地球温暖化に対抗するために、作物の遺伝子組み換えや農薬散布を推し進めましょう」と言っているのであり、もっと端的に言えば、「環境破壊に対抗するために、もっと環境破壊をしましょう」と言っているのである。

 一見すると筋が通った意見に見えるかもしれないが、その理論には歪みがある。このレトリックは、「地球温暖化は環境破壊」だが「作物の遺伝子組み換えや農薬散布は環境破壊ではない」という前提に則っている。だが、農薬によって汚染される土壌、遺伝子組み換え作物による植物の生態系の崩壊や、身体に与える影響を考えると、これらも1種の環境破壊であることは明らかだ。
 
 私がなるほどな、と思ったのは、こういう理論は他にも応用ができる、と思ったからだ。
 例えば、地球温暖化によって、渇水が進むときれいな水資源を確保するのが難しくなるので、(森林を切り開いて)水資源確保のための工場を拡充しましょう、みたいなことが言えて、かっこ書きの「森林を切り開いて」という部分をぼかしてしまえば、一見筋の通った意見に見えてしまう。
 
 空気の汚染が深刻なので(大量の電力を消費して)もっと空気清浄機を普及させましょう、とか、海面の上昇に対抗するために(さんご礁を殺して)しっかりとしたガードを作りましょう、とか、なんだって言えてしまう。
 おそらくこれから「環境ビジネス」という名目を立てるために、「環境破壊に対抗するために、環境破壊を進めましょう」というような“隠れた言及”は増えてくると思う。

 だまされては、いけない。