功徳を積んでみた

 今日、午後3時半ごろ。

 外回りの仕事で大通りをぶらぶらと歩いていると、道端に倒れているおじいちゃんを発見した。脱げた靴を一生懸命履き直そうとしていたが、体勢がおぼつかず、ふらふらするばかり。
 ここは一つ善行をしてみようと、おじいちゃんに「大丈夫ですか?」と声を掛けて、おじいちゃんが立ち上がるのを支えてあげた。
 腰でも痛めて立ち上がれなくなったのかと思ったが、幸いただ酔っ払っていただけだった。
 ただその後、おじいちゃんが感激してなかなか手を離してくれない。酔っ払って、感情が高ぶっていたこともあるのだろうが、ひたすら「あんたみたいな若者はいない!あんたみたいな若者はいない!」と連呼し、ついには感極まって泣き出してしまった。

 孤独なお年寄りが多いと聞く。
 本当は誰もが、心の支えを求めている。マザー・テレサは「この世界で最も酷い病気は“誰からも必要とされていない”と思い込んでしまうこと」と語っていたが、それは道端に倒れたお年寄りから、巨万の富を手にした大富豪まで、変わらない。

 あいにく私も仕事があったので、早々にその場を立ち去らなければいけなかった。本当はもっとおじいちゃんの話相手をしてあげたかったのだが。
 最後はお互い手を振って別れた。
 「社長、ありがとう!社長!!」と、おじいちゃんはずっと叫び続けていたが、

 あいにく私は社長ではなかったのである。