2008年04月11日
置き去りにされる人々
ふと思い出して、村上龍の『置き去りにされる人々』というエッセイ集を読んでいる。 この本の創刊は2002年だが、こう見てみると、この6年間日本を覆う閉塞感はまったくといっていいほど変わっていない。 『置き去りにされる人々』というタイトルが示すとおり、村上龍は、日本における格差が今後顕著になり、それに気づかない・目を逸らし続ける人が次々に置き去りにされていくだろうと予測している。 同じ日本にいるのに、同じ国に生きているのに、他の人にできることが自分だけどんどんできなくなっていく。誰からも尊敬されなくなり、受けられるべき社会保障も受けられず、体力が徐々に衰え、何の資格も技術もないままただただできることだけが少なくなり、生きがいも見出せず、活力と自信だけが失われていく。 一部の富裕層と、大量の貧困層との「希望格差(人生において、自分は何ができて、何ができないのか、という選択肢の格差)」は徐々に広がっていき、気づいた時には、メディアや政府に騙された、と感じる「取り残された人々」が大量に発生する。 私も同じようなことを感じていて、もし日本において根本的なパラダイムの転換が起きるのであれば、それは「置き去りにされた人々」の怒りの声によって、であろうと予測していた。 いつか、置き去りにされた人々は、自分たちが人間として最低限あるべき社会的な生き方すらできないことに気づく。しかし、気づいたときにはもう遅い。置き去りにされた人々は、怒りの声を上げる。そしてその力が結集したとき、政治や、社会や、システムを根本的に転覆する大きな力になる、と。 しかし、その予測は甘かったのではないか、と最近思うようになった。 引きこもりの平均年齢が30歳を超えたらしい。 引きこもりでなくても、30代40代になっても、髪を金髪に染め、日焼けサロンに通い、通勤時にはPSPを持ち歩き、駅にしゃがみこみ、食事はいつもマックに通い、そのような「小学生・中学生レベルの生活」を止めない大人が増えた。 通常、大人になって自由が増せば、もっと広い世界を知りたいと思ったり、もっと洗練された趣味や娯楽を極めたいと思ったり、上質な食事や上質な音楽を楽しみたいと思ったり、何にしろ、子供じみた生活を卒業し、上質と洗練を兼ね備えた、立派な大人になることを目指すだろう、と思われていた。 しかし、そうなっていない。 大人になっても子供の生活を止めない、ということは、だだっ広い世界に、半径50㎝の円を描いて、その中で生活する、というのと同じことで、要するに「閉鎖空間への逃避」に他ならない。 それは、「置き去りにされた人々」が、置き去りにされた状態から奮起して、社会や自分を変えようとするのではなく、「置き去りにされてもいいや」「大人の楽しみなんかできなくても、子供の楽しみが確保できればいいや」「リッチな人ができることが自分はできなかったとしてもいいや」「広い世界なんて見えなくてもいいや」・・・と、置き去りにされることを受け入れて、閉鎖空間へ逃げ込もうという姿勢の表れなのではないだろうか。 その逃避はあらゆる場面で顔を出す。 「もう結婚なんてできなくてもいいや」「海外旅行なんて一生できなくてもいいや」「子供をいい大学にやらなくてもいいや」「ボジョレー・ヌーボーなんて一生口にできなくてもいいや」「本場のジャズなんて一生聴けなくてもいいや」「高級料亭なんて一生縁がなくてもいいや」・・・ ただ諦めるのだけならいいが、置き去りにされた人々は、その下の句として「だって俺にはマックがあるし」「だって私にはPSPがあるし」「だってコンビニの安物のビールで満足だし」「だって金髪にしてまゆげ剃ってれば女にモテるから幸せだし」というように、閉鎖空間に逃げ込むことで「満足」してしまう、という欠点がある。 大量の貧困層が、置き去りにされることで怒りを感じるのではなく、閉鎖空間に逃げ込んで、置き去りにされることを受け入れ、諦める。 するとどうなるか。 「世界のことなんて知らなくてもいいや」「地球がどうなろうが知ったこっちゃないや」「温暖化とか難しくて分からなくもいいや」 「だって俺にはマックがあるし、PSPがあるし」 この国の閉塞感と、環境問題は決して無縁ではない。 むしろ、この閉塞感が、日本における環境問題を生み出したのだ、と言っても、過言ではない。
- posted by よっひ~ |
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2008年04月11日
本末転倒虫
昨日、道端で警察官が、「エコドライブをしましょうキャンペーン」のクリアファイル・ティッシュペーパー・携帯ストラップの3点セットを、歩行者に無料で配っていた。・・・ものすごい本末転倒臭がするのは私だけ?? 歩行者に配っても意味ないだろ、という意味と、そんな豪勢なセット、かえって資源の無駄じゃね?という、2重の意味で。
- posted by よっひ~ |
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