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 言いたくても言えないことなんて、人間なら誰もが持っている。
 過去のトラウマから、積もり積もった不平不満から、ふと思いついたしょうもないダジャレまで、人間の人生なんて、言いたくても言えないことで山盛りだ。

 だが人の人生のというものは、そういった言いたくても言えないことの影響下で進行している。今の自分の姿が過去の劣等感の裏返しであったり、怒りや不満が今の仕事を支える原動力となっていたり、1個人の姿は、目に見える部分以上に、「言いたくても言えない」という、目に見えない部分によって形成されている、と言ってもいい。

 富から権力、筋力からある1分野のテクニックに至るまで、この世のすべての力は、「言いたいことを言えるようになるための大義名分」として存在している、と言っても過言ではない。
 本当はいじめられて辛かった、本当は勉強なんてしたくなかった、本当はあの時友達が死ぬほど羨ましかった、本当は最初の彼女と結婚したいと思っていた、本当は母親を憎んでいたのではなく愛していた、本当はあいつに優しくしていたのはあいつとセックスしたいからだった、本当はあなたの言うことに全然興味がなかった、本当は死にたいのではなくて助けてほしかった、本当は自分もああいう大人になってしまうのかなと思うのが怖かった、本当は恋愛なんてしなくてもいいかなと思っていた、本当は適当に話を合わせていればいいかなとそれだけ思っていた、本当は誤解される以上に理解されてしまうのが嫌だった、本当は何もしたくなかった、・・・
 そういった言いたくても言えないことを言ったとしても、誰にも咎められない、ということが「力を持つ」ということの、本当の意味なのである。

 この世界に自由は少ない。