北帰行

 白鳥の北帰行が始まった。
 先頭の1羽を起点とした、見事なV字編隊飛行だ。
 早朝、「クゥワ、クゥワ」と鳴きながら進路を北に向け
 羽ばたいて行く。

 ラムサール条約の登録湿地となっている、渡り鳥の
 聖地「野付半島や風蓮湖」で越冬した群れが、今一斉
 に飛び立っている。

 風が変わったのだ。
 
 ちょっと前まで、流氷がびっしり根室海峡・標津の前浜
 に接岸していたが、7日から8日にかけた夜半に沖合に
 離れ、潮流に乗って太平洋に流出していった。
 
 風の勢力が北北東からようやく南南西に交代したのだ。
 
 温暖化の影響で流氷の勢力が弱ったと思っていたら、
 今年の流氷はしつこく沿岸にとどまった。昔のように。
 お陰で、ホタテ漁や4年後の資源となるホタテ稚貝放流
 に影響が出た。カレイや春鰊を獲る底建て網漁にも。

 漁師は、早く風を変えてくれと言い続けていた。

 春の風に交代して、標津の地域は動きが活発になった。

 そんな姿を見下ろしながら、白鳥はシベリアに飛び立った。
 白鳥は野付湾に自生する甘藻を食べて越冬する。
 甘藻は、湾に注ぎ込む森のミネラルを食べて成長する。
 流氷は、ホタテや鮭の成長に欠かせないプランクトンを
 運んでくる。

 永永と続いてきた自然の営みを、永遠とするための行動が
 今に生きる私たちに、今求められている。

  何げない季節の交代式に感じた。

  11月には、冬の訪れを告げる白鳥がシベリアから戻って
  くることだろう。